始まり

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春は、里美と別れて家に帰るなり居間でドタバタしていた。 居間には、春の準備中の荷物が散乱している。 「ちょっと、お母さん! 単3電池どこ?」 春は、ピンクのヒョウ柄のリュックサックに荷物をつめながら尋ねる。 すると、台所から顔を出した母が単3電池を放り投げた。 それに気づいた春は、キャッチする。 「おぉ、ありがとう!」 「春、里美ちゃん所に行くならマカロン作ったから持って行きなよ」 「はーい。 そうだ、夏休みだから一週間は里美ん家にお泊りだから」 母は、台所に戻りながら返事をする。 「はいはい、分かってるわよ」 「はいは、一回!」 「はい、はい、はい」 春は、苦笑しながらキャリーバックにも荷物を入れる。 荷物の中には、日本刀のレプリカや木刀とコスプレ用の着物が含まれていた。 母が再び居間に入ると、春に袋を渡す。 「はい、マカロン」 「はい、たしかに。 じゃあ、行ってきます」 袋を受け取り、時計を見るとリュックサックを背負いキャリーバックを引いて玄関に向かう。 すると、母が玄関までやって来た。 春は、不思議そうに首を傾げる。 「なに?」 「帰って来たら、なに食べたい?」 「うーん、卵焼きかな?待ち合わせあるから、行ってきます!」 「気をつけてね」 春は、母に見送られて家を出た。 家の前に里美の姿を見つけ、急いで駆け寄る。 「ゴメン! 待ったりした?」 「大丈夫。 さっき来たから」 「じゃあ、例の場所に行こう」 二人は、目的の場所に向かう。 これから二人が行く場所は、いかにも幽霊が出そうな古いマンション。 噂では、マンションで人が消えたとか消えないとか。 前に実験をした時、不気味なマンションすぎていろいろ期待したが何も起こらなかった実績がある。 「あのマンション、まだあるかな?」 「あるでしょう。 大きいマンションで、駅近いんだし」 二人で雑談しながら歩くと、噂のマンション前につく。 「前は、西側のエレベーターだったよね」 「じゃあ、北側にするか」 二人は、キャリーバックを転がしながら北側のエレベーターを目指す。 古い廊下に、二人の足音とキャリーバックを引く音が響く。
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