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「マジですかー?!」
意識を失っていた春は、男の絶叫で目を覚ました。
春の目に真っ先に飛び込んだのは、日の光とさんさんと生い茂る草。
春は、驚いて体を起こし後ろを振り向くと女の子の服を着た男がいた。
男も後ろを振り向く。
「「……」」
二人は、お互いに駆け寄るとじろじろ見合う。
「はっ、春?」
「里美?」
「「どうして、男になってるの?!」」
二人が息ピッタリに、叫ぶと自分の体を確認する。
あるべきものが無くて、無かったものがあった。
二人は顔を青くすると、その場に座り込んだ。
「どっ、どうなってるの?」
「いや、私に聞かれても」
里美は、辺りを見回すと春に耳打ちする。
「ここ何処だか知らないけど、一般から見たらウチら変態だよ!」
それを聞いた春は、慌てて周りを見る。
今は誰も居ない草原ようだが、いつ人が来るか分からない。
春は、立ち上がる。
「着替えなきゃ! マジ、ヤバい!」
「そうだ、着物! コス用の着物に着替えよう」
「里美、天才! でも、何処で?」
里美は近くに転がっていたキャリーバックを引っ張り、乱雑に着物を取り出した。
「此処で、急いで着替えるしかない」
「えっ? 恥ずかしいんだけど!」
「今は男なんだから、堂々としなさい!」
里美は、言うなり服を脱ぎ捨てる。
春は、自棄になると服を脱ぐ。
今の自分達には不似合いな、可愛らしいブラもアクセサリーも外す。
ふと、二人はお互いの下半身を見た。
先に口を開いたのは、里美。
「ねぇ、ボクサーパンツ二枚ある?」
「ある」
春は、キャリーバックからボクサーパンツを里美に投げる。
里美は、パンツを受け取り着物を着てから履く。
春も、着物を着てから下着を変えた。
二人は、自分の荷物を片付けながら話す。
「ねぇ、化粧落とさないと変だよね?」
「ウチは、落とす。 キモいって言われたら、立ち直れないかも」
「私も、落とそう」
着ていた服をキャリーバックに入れると、リュックサックからお互いに化粧落としでスッピンになる。
自然と二人は、顔を合わせた。
里美の顔は、目が切れ長で鼻筋がはっきりしていてストレートの黒髪が良く似合う。
一方、春は少し癖のある茶髪で童顔っぽいせいか少し幼く見える。
春は、あまりの違いにうなだれた。
「なんで、かっこよくならなかったの? 私の顔……」
里美も、春と同様にうなだれる。
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