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「えーっ。 春みたいなベビーフェイスがよかった」
二人は、残念そうにゴミを片付けはじめる。
春は時間を見ようと、携帯を開き固まった。
里美は、気づいていないのか春に話かける。
「って言うか、これ夢じゃね? いきなり男になるとか、ありえないし!」
「……」
何も反応しない春に、里美が春を見た。
「ねぇ、聞いて……。 なに固まってんの?」
春は、下を向いて固まったまま動かない。
里美は、春に近づくと顔を覗き込む。
「春?」
「携帯」
「はぁ?」
「携帯、圏外なんだけど!」
勢いよく顔を上げた春は、運悪く里美と頭をぶつける。
ゴンッと鈍い音が、草原に響く。
里美が額を抑えながら、すぐさま春に抗議する。
「ちょっと、痛すぎるわ! 急に顔を上げないでよね!」
春も額を抑えながら、里美に携帯を見せる。
「ゴメン、とにかく携帯見て」
里美は、春の携帯を受け取り画面を見た。
春の言う通り、電波を表示する場所には圏外と書かれている。
「なんで、圏外? ここ日本じゃないの?」
「わかんない。 とにかく人を探そう」
春は、携帯を里美から受け取りリュックサックに入れる。
二人は、立ち上がるとリュックサックを背負いキャリーバックを引いてとりあえず歩き始めた。
「ねぇ、迷子……。 すでにそうだけど、人に会えなかったらどうするの?」
「どうするって、野宿になるでしょ」
「マジかよ」
二人が歩き出してしばらくすると、目の前に森が広がると立ち止まった。
「うげっ、森かよ」
「っか、なんで森? 死亡フラグだわ」
一言づつ毒を吐くと、どちらともなく森の中へ入って行く。
森の中に入ると、太陽の日差しを木々の葉が遮り美しい風景を見せていた。
最初は毒を吐いたものの、清んだ空気と景色の美しさに二人のテンションは自然と上がる。
「なんか、すごい綺麗!」
「ねー。 最初、不気味だと思ってたから以外!」
二人で笑いながら歩き続ける事、1時間くらいが経過しようとした時だ。
春は、森の奥からした微かな音に立ち止まる。
「ねぇ、里美。 なんか聞こえない?」
「えっ?」
里美は、すぐに注意深く耳をすませる。
森の奥からは、微かに人の大声が聞こえた。
二人は、すぐにキャリーバックを担いで走り出す。
後少しで森を抜ける手前で、二人は異変に気づき驚きのあまり固まってしまった。
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