始まり

6/6
前へ
/33ページ
次へ
二人の目に飛び込んだのは、戦国絵巻にあるような戦の景色。 大勢の男達が、槍や刀を手に殺し合っている。 二人は、目の前の光景に動けずにいた。 「何? 映画の撮影?」 「にしては、すごく血の匂いがしない?」 「貴様ら、何者だ! そこで何をしている?」 二人の背後から、男の声がした。 振り返ると、刀を持った足軽姿の男が立っている。 「すみません、ちょっといいですか?」 春は、男に質問しようと歩み寄った。 その瞬間、春の右頬から左胸に痛みが走る。 里美が悲鳴を上げた。 「キャアアアーッ!」 「なっ、何?」 春は、恐る恐る自分の頬を撫でるとぬるりとした液体が手につく。 手を見ると、血がついている。 男は、刀を構え直すと声を荒げた。 「怪しい奴め! さては、真田幸村の送った死客かっ!」 二人は、ショックで動く事も話事も出来ずにいた。 何も答えない二人に、男は固定だと捕らえたのか刀を振り上げる。 春は、これで死ぬのかと目に涙をためた。 頭の中には、走馬灯が駆け巡る。 近くに居るはずの里美の声が、春には遠くに聞こえた。 「はるぅううっ!」 里美の涙声の叫びが森に響いた。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加