8人が本棚に入れています
本棚に追加
二人の目に飛び込んだのは、戦国絵巻にあるような戦の景色。
大勢の男達が、槍や刀を手に殺し合っている。
二人は、目の前の光景に動けずにいた。
「何? 映画の撮影?」
「にしては、すごく血の匂いがしない?」
「貴様ら、何者だ! そこで何をしている?」
二人の背後から、男の声がした。
振り返ると、刀を持った足軽姿の男が立っている。
「すみません、ちょっといいですか?」
春は、男に質問しようと歩み寄った。
その瞬間、春の右頬から左胸に痛みが走る。
里美が悲鳴を上げた。
「キャアアアーッ!」
「なっ、何?」
春は、恐る恐る自分の頬を撫でるとぬるりとした液体が手につく。
手を見ると、血がついている。
男は、刀を構え直すと声を荒げた。
「怪しい奴め! さては、真田幸村の送った死客かっ!」
二人は、ショックで動く事も話事も出来ずにいた。
何も答えない二人に、男は固定だと捕らえたのか刀を振り上げる。
春は、これで死ぬのかと目に涙をためた。
頭の中には、走馬灯が駆け巡る。
近くに居るはずの里美の声が、春には遠くに聞こえた。
「はるぅううっ!」
里美の涙声の叫びが森に響いた。
最初のコメントを投稿しよう!