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母さんは俺に謝り続けた。
腕に伸びきった爪が突き刺さる。
一年前まで艶のあった髪は潤いを失い、ボサボサな一つ縛りになっている。
母さん。
ごめんね。
俺が無力だから。
俺のせいで母さんはこんなになっちゃったんだね。
騙されて背負わされた借金。
その返済から逃げ出した親父。
地道に返していってた。
俺と母さんで。
毎日が質素だったけれど、こっちのほうがまだ幸せだったんだ。
だけど、一年前、借金を早く返せる方法があると言われ、俺のために母さんはその話に乗った。
1日も早く借金を返して、あなたを高校に通わせなくちゃね、と。
母さんは今の時代珍しいが最小限の荷物をまとめ、出稼ぎへと出て行った。
そんな母さんとの連絡が途絶えたのは半年前だった。
突然母さんから電話が来なくなった。
俺は母さんの居場所を知らない。
必死に探した。
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