第一章・―情報屋さんのお仕事は―

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 男性の姿は漆黒の瞳に肩までかかる黒い髪に、ダークグレーを基調としたツーピースのスーツ姿で、濃紺のネクタイをきっちりと締めている。  顔は少し幼い表情をしているが、垂れ目気味で、どちらかというと格好良いよりは、可愛いと表現した方が似合う。  当然その姿には、どう見たところで手榴弾など似合わない。  しかも言っている台詞ときたら、 「貴女の背中に突っ込んで良いですか?」  なのである。  無論の事男性が“突っ込み”たいのは、言うまでもなく手榴弾の事を指しているのだろう。  だが、何故か主語が抜けたまま喋っているため、聞く人が聞けばかなりの度合いで誤解を招くだろう。しかしそんな些末な事実は、今のクーリッシュにとって、どうでも良い事であった。 「……ローザちゃん、仕事ってコレっすか? 俺がスマイリーさん相手に、どうしろと?」  そう、悲しい事に男性は、実は二人の知り合いなのだ。
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