―Prologue―

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 見知らぬ“翠”色の人が、僕を見下ろして笑っている。瞳の色が“紅い”。……この人は、人間じゃないんだろうか?  お父さんとお母さんの血を全て、吸ってしまった?  コレハ、イマメノマエニイルモノハ……。  きっと、吸血鬼だ。  初めて感じる“死”の恐怖、でも身体は動かない。僕はもう、死ぬんだ。  この“翠”色の吸血鬼に、殺されるんだ……! 「……にたく、ないよ」  やっとの思いでそれだけ呟く。だけど、それを聞いた“翠”色の吸血鬼は、僕を嘲るように笑うだけだった。  ゆっくりと手が降りてくる。思わず目を瞑ろうとしたその瞬間、僕と“翠”色の吸血鬼の間に。柔らかいような、それでいて鋭く“蒼い”風が走った。  そこから姿を現したのは、黒を基調としたスーツを着ている。蒼い鎖に、透明な蒼い石の止め具が特徴のループタイを着用した。“蒼い”髪の人だった。
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