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無線連絡機はお互いの機が目視できる程度が最大距離であるが、近距離ですらこの有り様である。
最大距離とは名ばかりで、ギリギリまで離れれば殆どノイズしか聞こずに全くと言っていいほど機能をはたさない。
長距離の通信が必要な場合は空中通信中継艦を発艦させて空母までの中継を行うのだが、これまた通信の性能はユーフーと大差ないのである。
いわば、スピードと攻撃力の搭載されていない、他に使い道のない小型機といったところだ。
皮肉にも名前だけはフラトゥーニ(野鳥の目)という立派な名前が付けられてはいるが。
先頭を行くアサドの機が合図となるバンクを振ると、ユーフーは綺麗な正三角形の隊列を崩さずに北東へと向かう。
地上から見上げれば、まるでヒグラード峡谷の上空を渡り鳥が飛んでいるかのように見えるはずである。
またざらついた音がスタッカートを刻んだ。
「……ジ…ガッ…先輩……」
通信状況は極めて劣悪だが、声の主はすぐに分かった。
「ラウか」
コックピットのガラス越しに左を見ると、ゴーグルをかけたラウが右手を上げて合図している。
「どうした?」
「……ジ……お酒おごっ…てくれる約束忘れない…でくださいよ?」
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