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「これだけか……しかし、いったい何なんだコリャ?」
小さく溜め息をついて爪先で壁を軽く蹴っ飛ばした。
どくん。
突如、地の底から沸き上がる、全身の肌が粟立つような振動。
「今度は何だ!?」
ロアは慌てて辺りを見回したが、それっきり、しんとして何も起こらない。
薄暗闇の中で、くたびれた自分のブーツの爪先を見下ろした。
「……コレか?」
もう一度小突いてみる。
どくん。
先程よりも大きい振動が地面の下から突き上げるように襲い、パラパラと壁から砂が剥がれ落ちてきた。
どくん。
どくん。
回数を重ねるごとに振動は大きくなり、ロアは何もしていないにも関わらず、振動が繰り返し始め、壁から剥がれ落ちる砂の量もどんどん増える。
「あ……あれ? 何かやっちゃいけない事やっちまった感じか?」
ひきつった笑いを浮かべるロアのこめかみを、一筋の冷や汗が流れる。
ロアは振り返ると同時に、出口の光に向かって走り始めた。
壁や天井から剥がれ落ちてくる砂が戦闘服の首筋に入り込む。
首を引っ込めて全力で走ろうとするが、振動で真っ直ぐ走れずに幾度となく壁に肩をぶつける。
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