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「連邦の奴等が引くぞ! こちらもタイミングを合わせて引け! 戦闘機は回収せずに上空待機するように通達せよ!」
亜麻色の髪をした青年が右手を前に突き出して指令を下した。
青年は長い亜麻色の髪を後ろでゆるく縛り、装飾のされた軍服を身に纏っている。
瞳は透き通るように青く、鼻筋の通った美しい顔つきをしていた。
ここはクランダルト帝国軍、飛行母艦バイデンラッハのデッキである。
デッキと呼ばれてはいるが、海上船で言うところの甲板ではなく船室の部分にあたり、戦況が見渡せるように周りにはガラスが張られている。
青年はデッキの尖端まで行くとガラスに両手をつき、紅い大地を見下ろした。
「あれは連邦軍の兵器なのか……? それとも……」
青年の表情は強ばり、声に震えが混じっている。
その視線の先には、信じがたいほど巨大な四本足の『あれ』があった。
『あれ』以外の言葉でそれを表現する方法を青年は持ち合わせていない。
だが、それは青年だけではなく、デッキに居る他の者も、戦闘機に乗っている者も同様である。
デッキの扉を開けて青年よりも年上に見える男が走り込んで来ると、その男は青年の前にひざまづいた。
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