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「急ぎの伝令にて敬礼は省かせていただきます。ブッフバルト将軍より、敵の背後から追撃せよとの伝令です」
それを聞いた青年は驚いた表情で振り返ると、眉を吊り上げて声を荒げた。
「馬鹿な! ブッフバルト将軍にはあれが見えていないのか!? あれが何なのかもわからないのだぞ!? もしあれが連邦軍側の兵器ならば兵を犬死にさせるだけだ! それともあれが我が帝国軍の兵器だとでもいうのか!」
この男に怒鳴っても仕方のないことだとは分かっていたが、そうせずにはいられなかったのだ。
「くっ……」
青年は下唇を噛み締め、男に下がるように合図した。
男がデッキから出ていくと、青年は再びガラスの外に目をやる。
他の艦にも伝令が行っているようで、その中のいくつかは既に動き始めていた。
青年は貴族の生まれであり、それ故、若くして母艦の艦長という地位に就く事ができていた。
青年は名をローラント=フォン=リュースという。
フォンとは伯爵号であり、リュース家は代々続く名家である。
だが、それでも後方に控える将軍の命令は絶対であり、命令無視は伯爵号を取り上げられ、死をもって償わなければならないのだ。
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