亜麻色の青年

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拳を硬く握り締め、まるで苦い物を吐き出すかのように呟く。 「ちっ……威張るしか能のない老獪めが。あんな権力にしか興味がない俗物がいつまでもふんぞり返っているから無駄な戦いを繰り返さなくてはならないのだ」 ローラントは振り返ると、硬く握った右手を前に突き出して広げ、声を張り上げた。 「我が艦は最高高度より敵を追撃する! 全速で限界まで高度を上げよ! 我が隊の戦闘機も同様である!」 苦肉の策であった。 恐らく今から追撃すれば連邦軍は急速反転し、迎撃の構えを取るであろう。 そうなれば、帝国軍は『アレ』の上空で戦わねばならないのだ。 得体の知れない物の恐怖に怯えながら戦闘を展開して勝てるはずなどない。 ローラントは上から連邦軍を撹乱し、敵を分断して他の艦に中央突破させようと考えたのである。 ローラントは帝国が嫌いだった。 正確には現在の腐敗しきった帝国が嫌いなのである。 軍内部でも貴族や皇族がふんぞり返り、一般兵の命など、そこらに転がっている石と同じぐらいの重さしかない。 だからこそローラントは軍に志願したのだ。 ただのいち貴族のままではなく、自らの力で地位と権力を手に入れ、帝国を内部から変えるために。
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