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「まったく、帝国軍人様には休みもないのかね……頭の下がるこった」
ロアはひとりで苦笑いを浮かべると、アサドの後を追って開きっぱなしの扉をくぐった。
通路に出ると、若い男が声をかけてきた。
「先輩、また帝国が動き出したみたいですね」
「ラウか……ああ、そうみたいだな。やっと寝付いたところだったのにアサド部隊長に叩き起こされちまったぜ」
ラウは人懐っこい笑顔でロアのそばまで小走りにやって来た。
ロアやアサドとは違う民族の出であるラウは、背が低く肌が浅黒い。
一見少年のように見えるが、れっきとした成人男性であり、ロアと同じくこのアーキル連邦迎撃部隊の船乗りである。
「お互いバッチシ手柄立てて出世しちゃいましょう!」
ロアはやれやれといった様子で軍帽を深く被り直した。
「あのな……何度も言うようだが、俺は出世とかには興味ないの。飯にさえありつければ良いんだってば」
「もったいないなぁ。先輩ぐらいの腕があればもっと出世狙えるのに」
ラウが隣を歩きながらロアの胸に付いている一枚羽のバッチを見る。
迎撃部隊のバッチは一枚羽から三枚羽まであり、階級が上がれば羽の枚数も増える。
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