341人が本棚に入れています
本棚に追加
「ちっ! やっぱり間に合わねぇよな」
ロアはユーフーの後部座席で墜落していく戦艦を見下ろしながら舌打ちした。
眼下では連邦軍の陣形が真っ二つに割れ、艦隊指揮が行き届かない所を挟み撃ちにされて散り散りになり始めている。
「さむっ!」
ロアは思い出したように声を上げ、両腕で自分の体を包み込むようにして丸くなった。
最高高度に達している為に、先程より更に気温が低い。
「でも先輩、よく相手の作戦がわかりましたね」
操縦席にいるラウが興奮気味に振り返った。
「あのな、こんな状況で追撃するなんざアホの指示に決まってるだろ。あのデカイのが帝国軍の兵器ならいざ知らず、そういうワケじゃなさそうだしな。そんなアホな指示を受けた時に自分ならどうするかって考えただけだ」
ロアの声は寒さでビブラートがかかっている。
「それより、これからどうするかが問題だ。母艦は撃ち落としたが、結局アチラさんの作戦は成功しちまったわけだからな……つーかロア、上着貸してくれよ。撃ち落とされる前に寒さで死んじまう」
「バカ言わないでくださいよ。操縦しながら脱げるわけないじゃないですか」
ラウは笑って返したが、どうやら冗談抜きで寒いらしい。
最初のコメントを投稿しよう!