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パンツ一丁にゴーグル、最高高度にあって機体の気密性まで低いとくれば当然である。
既にロアの顔は血の気がなくなり、唇は紫色になり始めていた。
しかし、だからと言って母艦に戻れるような状況でもない。
「もう少し我慢しててください」
ラウはそう言うと、最高高度を保ったままスピードを上げる。
「おーい! 俺を凍らせる気か! 死んじゃう! 死んじゃうってば!」
ロアが情けない声を上げるが、ラウは耳に届いていないかのように更にスピードを最大まで上げた。
戦闘が繰り広げられている空域の遥か上空を、二人を乗せたユーフーが飛んで行く。
「ちょっとラウくん! 聞いてますか?」
もちろんそれはロアを凍らせる為などではなく、一度戦場から離れてロアを安全な場所に下ろす為である。
戦場離脱の罪にあたるかもしれないが、それでもロアを凍死させるよりは良かった。
それに、最高高度を飛行してきたのである。
あの状況では誰も視認できていない可能性も高い。
戦場から離れると、ラウはようやく高度を下げ始めた。
「後で迎えに来るので降りて待っててください」
ラウがそう言った時、前方の空に黒い点がいくつも並んでいるのが目に入った。
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