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「先輩! アレを見てください」
ラウがその黒い点を指差した。
「どっちだ?」
ロアが操縦席に身を乗り出して目を細める。
その黒い点はどちらかの援軍に他ならず、連邦軍の援軍ならば起死回生となるが、この戦況で帝国軍側の援軍が到着すれば致命的である。
並んだ黒い点の中から、ロアの目が珍しい形の物を見つけ出した。
縦に薄い機体に長く垂れ下がった二枚の尾翼、間違いなくマーレⅡであった。
防御を完全に棄ててスピードに特化した連邦軍戦闘機である。
他の機に防御力があるかというと、そういうわけでもないが。
マーレⅠは軽量化し過ぎた為に自らの出すスピードに耐えられず、空中分解が多発して半年ほど前にめでたく製造中止になっている。
「こちらの援軍ですよ!」
ラウもそれに気付いたらしく、上擦った声でそう言うと急いで通信機を手に取った。
ギリギリ通信機が届くかどうかという距離である。
「こちら連邦軍蒼碧の翼第十四部隊所属ラウ、応答願います」
どうやら通信は届いていないらしく、機内に「ザッ……ジジッ……」と耳障りな音が響く。
「こちら連邦軍蒼碧の翼第十四部隊所属ラウ、応答願います」
同じセリフをもう一度繰り返す。
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