捕虜

4/23
前へ
/227ページ
次へ
「先輩! アレを見てください」 ラウがその黒い点を指差した。 「どっちだ?」 ロアが操縦席に身を乗り出して目を細める。 その黒い点はどちらかの援軍に他ならず、連邦軍の援軍ならば起死回生となるが、この戦況で帝国軍側の援軍が到着すれば致命的である。 並んだ黒い点の中から、ロアの目が珍しい形の物を見つけ出した。 縦に薄い機体に長く垂れ下がった二枚の尾翼、間違いなくマーレⅡであった。 防御を完全に棄ててスピードに特化した連邦軍戦闘機である。 他の機に防御力があるかというと、そういうわけでもないが。 マーレⅠは軽量化し過ぎた為に自らの出すスピードに耐えられず、空中分解が多発して半年ほど前にめでたく製造中止になっている。 「こちらの援軍ですよ!」 ラウもそれに気付いたらしく、上擦った声でそう言うと急いで通信機を手に取った。 ギリギリ通信機が届くかどうかという距離である。 「こちら連邦軍蒼碧の翼第十四部隊所属ラウ、応答願います」 どうやら通信は届いていないらしく、機内に「ザッ……ジジッ……」と耳障りな音が響く。 「こちら連邦軍蒼碧の翼第十四部隊所属ラウ、応答願います」 同じセリフをもう一度繰り返す。image=471446742.jpg
/227ページ

最初のコメントを投稿しよう!

341人が本棚に入れています
本棚に追加