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自分のタイミングを外され、猛スピードで走っていた下半身と縄梯子に置いていかれた上半身のスピードにズレが生じる。
「く……っ!」
必死でバランスを保とうと試みたが、所詮は生身の人間である。
二・三歩進んだ所で足がもつれ、ロアの体が宙に浮いた。
「あーーーぁあーーー!!」
ロアは言葉にならない声を発し、スローモーションのような視界の中で、なんとか受け身の体勢を取る。
異様に時間が長く感じられるが、これといって特に出来る事もない。
なぜなら、実際の時間は一瞬であり、そもそも体は宙に浮いたままなのだ。
ようやく体が地面に触れたと思った瞬間、今まで貯まっていた時間が一気に流れ出したかのように、今度は景色が目まぐるしく変わる。
「うおっ!」
ロアの体は砂漠の上をこれでもかというほど転がり、派手に砂埃を上げてようやく止まった。
うつ伏せになっていた体を引っくり返し、仰向けになる。
「いってぇ……」
いくら砂の上だったとはいえ、あのスピードで打ち付けられ転げ回ったのだ。
全身が打ち身でジンジンと熱を持っている。
背中にあたる焼けた砂が熱いが、先程まで凍えそうだった事もあり、今はさほど気にはならない。
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