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羽のバッチの上には、鉄翼、銀翼、金翼とあるが、ここにいる二人には縁の無い階級である。
「いいんだって俺は」
やる気の見られないロアに、ラウが立ち止まって真面目な顔で言う。
「僕はいつか金翼のバッチを付けたいです」
「そうか。じゃあせいぜい頑張ってくれ」
ロアはそう言うと、右手をひらひらと振ってラウを残したまま先に進む。
「せ、先輩ちょっと待ってくださいよ……僕本気なんですから」
「はいはい。わかったわかった」
ロアは軽く流すと、迎撃機発着庫の扉を開いた。
「ロア、ラウ、さっさと整列せんか」
声の方を見るとアサド部隊長を正面に、迎撃部隊のメンバー達はロアとラウを除いて全員整列している。
二人が列に加わると、一同は号令とともに敬礼する。
「既に聞いているとは思うが、帝国軍が我らが連邦領内に侵入してきた。我等はこれを迎撃に向かう。予定では一時間後の一二○○<ヒトフタマルマル>に接触、ザイル砂漠内ヒグラード峡谷上空にて、これを迎え撃つ。各自、出撃の準備を整えて待機せよ」
アサド部隊長がそう告げると、一同は腹式呼吸の切れの良い返事を返した。
一名を除いて。
その一名とはもちろんロアである。
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