捕虜

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「では、バレエガルタは帝国軍の兵器ではなく、自分が動かしたというのだな?」 ロアの正面に座った恰幅のいい白髪の男がテーブルに肘をついて尋ねる。 「いや、だからそうではなくてですね……」 ロアは軍帽を左手で頭から取って右手でクセのある髪を掻く。 確かにあの時、ほら穴の中で得体の知れない光を見て触れた事は間違いない。 だが、それがバレエガルタを動かしたなどという確証はひとつもないのだ。 「議長! あのような馬鹿げた話しを信じるつもりですか?」 先程の中年男が鼻息荒く立ち上がると、他の者達もやんややんやと口を挟み始めた。 「バレエガルタを操作すれば、帝国軍どころか北の王国まで簡単に攻略できる」などとふざけた事を言い始める輩まで出てくる始末である。 ロアは溜め息を吐いて軍帽を頭に乗せ、「言い争ってる場合じゃないと思うんだけどねぇ」と呟いた。 バレエガルタはあの四本の足で動き始め、南下しているとの情報が入って来たばかりであった。 現在は連邦側にも帝国側にも向かってはいないため、このような無駄な討論をしていられるのだろうが、ひと度どちらかへ向けばそれどころではなくなるはずである。
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