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翌日、ロアの眠りを妨げたのは、ドアを激しく叩く音であった。
「もう少し寝かせてくれよ……」
ロアは毛布を頭から被ってベッドの上で丸くなる。
「ロア、起きろ! 任務だ!」
ドア越しにもかかわらず、ドスの効いたアサドの声が部屋中に響く。
ロアは渋々毛布を退けて上半身を起こすと、大きく溜め息をついた。
まだ体内に残っているアルコールの匂いが鼻をつく。
「あー呑みすぎたなこりゃ……」
癖毛の頭を掻きながらベッドから出ると、パンツ一丁のままドアの鍵を開けた。
アサドは勢い良くドアを開けると、「ようやく起きたか。捕虜の尋問だ」と言いながら部屋に上がり込み、ベッドの横に脱ぎっぱなしになっていたロアの軍服を丸めて投げて寄越した。
「はい? 尋問……って……俺が?」
戦場で急を要する場合は現場の人間が尋問を行なう事もあるが、通常、連邦での尋問は尋問官が行う。
素人による必要以上の拷問や、私刑を避ける為の処置である。
「そうだ。上からのご指名だ」
「なんで俺が……」
アサドは丸められた軍服を抱えたまま右足の指で左足の脛を掻いているのロアの頭に、「ブツブツ言ってないでさっさと着替えろ」と軍帽を乗せた。
ロアはもう一度大きく溜め息をつくと、渋々軍服に着替え始めた。
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