捕虜

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軍服を身につけたロアは軍帽を人差し指に引っ掛け、クルクルと回しながらアサドの後に続いて部屋を出る。 「俺なんかに尋問させるなんて、上層部の頭が暑さでゆだったか尋問官が仲良く揃って下痢にでもなっちまったんですかね」 「バカな事を言ってないでさっさと歩け」 アサドは振り返りもせずに足を進める。 「へいへい」 ロアは苦笑いを浮かべると、アサドの大きな背中に目をやって指に引っ掛けていた軍帽を頭に乗せた。 「ところで、アレ……何だっけ? バラ……バラエ……? バラなんちゃらについて何か新しい情報とか入ってないんですかね?」 「バレエガルタだ! 名前ぐらい憶えておけ。何の情報も無いからお前が呼ばれたんだ」 「なるほどね……」 ロアは諦めたように肩を落として天井を見上げた。 恐らく、尋問官が尋問しても捕虜からは何の情報も得られず、苦肉の策としてロアが呼ばれたのであろう。 連邦では罪を犯していない連邦軍人への尋問を禁じている。 連邦がいくつもの国がまとまってできているという特性上、内部での衝突を避けるためであった。 つまり、建て前はロアは尋問する側であるが、ロアの他にも尋問官が立ち会い、実質的にはロアと捕虜の二人から情報を聞き出そうという上層部の姑息な手である。
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