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ロアは自分の愛機のそばまで行くと、緑色の機体を右手で二回叩いた。
薄い装甲が内部で反響音を立てる。
粗悪な合金でできた装甲に地中深くから掘り出された『浮遊機関』を搭載し、プロペラで前進する。
これが迎撃部隊に与えられる戦闘機であった。
機名はユーフー、夜鳥という意味である。
夜鳥は自然と方角を知り、暗い中でも迷わずに巣へと帰って行く。
夜鳥への尊敬の念と、無事の帰還を願って命名された。
浮遊機関とは、遥か古代の地層から発見された、その名の通り『浮遊を可能にする機関』である。
現在でも素材やメカニズムなどは一切解明されないまま実用に至っている。
帝国では『生体機関』と呼ばれる物が使われているが、こちらも連邦同様、ただ掘り出しては無理矢理搭載しているだけであった。
ひとつ大きな違いは、どうやら生体機関は『生きているらしい』と言う事である。
だが、帝国側ではないロアには確かめようがない。
撃ち落とした機体の生体機関は既に死んでいるのだから。
ロアは振り返ると、作業着の男に声をかけた。
「ちゃんとコイツの修理と点検は終わってるんだろうな?」
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