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男は振り返ると満面の笑みで返す。
「まかせてくださいよ。ロアの旦那。バッチリですわ」
「そうかい。ありがとよ」
ロアはそう礼を言ってロッカーへと向かった。
戦闘服を着こんだロアは、窓から雲の海を見下ろして巻き煙草にマッチで火をつける。
ロアはこの瞬間が不思議と好きだった。
これから戦場へと向かう僅かな時間に、人生最後になるかもしれない一服。
別に自殺願望があるわけではない。
だが、死を背にしているからこそ感じられる生がある。
そんな皮肉めいた状況が好きなのかもしれない。
生き残ってナンボだ。
生きているからこうして煙草が吸えるのだ。
ロアは煙を天井に向かって吐き出すと、短くなった煙草を灰皿に押しつけ、新しい煙草を取り出して最後の一本のマッチを擦った。
「ちっ……シケってやがる」
背後から聞こえた足音に振り返ると、ラウであった。
「おう、丁度良い所に来た。マッチ持ってねぇか?」
ラウは苦笑いすると、ロアの隣にある灰皿に目をやった。
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