夜鳥"ユーフー"

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既に五本ばかりの煙草が灰皿に乗っている。 「煙草吸わない僕が持ってるワケないじゃないですか。それに、もうそろそろ時間ですよ?」 ロアが舌打ちすると、割れたスピーカーから耳障りな艦内放送が流れた。 「間もなく本艦はヒグラード峡谷上空に到達する。各戦闘員は戦闘配置につけ」 窓の外を見ると、いつの間にか雲は切れて肌色の砂丘が連なっている。 「しゃーねぇ。行くか……」 ロアは名残惜しそうに灰皿を一瞥して頭をかいた。 「この戦いで死んじまったら、次は死ぬほど煙草が吸える時代に生まれよう」 「何言ってんですか……今でも死ぬほど吸ってますよ」 ラウの言葉にロアは「ちげぇねぇ」と笑って返し、迎撃機発着庫へと向かった。 戦闘を前に忙しく動きまわり、否が応にも皆の緊張が高まる。 ラウの表情にも緊張が見てとれた。 「あんまり気張るな。死んじまったら出世もクソもねぇんだからよ」 ロアはそう言い、無精髭をじょりじょりと弄っていた手をラウの肩に置いた。 「わかってます」 「まぁ、帰って来たら一杯ぐらいおごってくれ」 「先輩がおごってくださいよ」 ラウは振り返って笑った。
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