雨の日に。

2/11
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
6月。 ジメジメした空気が漂う梅雨の季節。 日本の上空に何処からともなく、現れた梅雨前線はここ数日、毎日雨を降らしていた。 そんな鬱陶しい天候に道を行き交う人々もどこか憂鬱な表情を浮かべている。 ついこの間までは晴天続きだったと言うのに、この差は一体なんだと言うのだ。 これが日本人に定められた運命だと言うのなら、なんて悲惨なことなんだろう。 そんな下らないことを思いながら、俺は曇天の下の景色を車窓から眺めていると、停車駅への接近に伴い、電車がゆっくりと減速していくのを感じた。 もうすぐ、俺の通う双林寺高校の最寄駅に到着するのだ。 《双林寺、双林寺。お降りの際は傘などの忘れ物の無いよう、ご注意下さい。》 しゃがれた車掌のアナウンスが車内に響き、自動ドアが開かれる。 俺はドアが開くと同時に電車から駅のホームに降り立ち、改札口へと進む。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!