5599人が本棚に入れています
本棚に追加
噛みつきやしないのに……と思ったが、この現実離れした世界じゃ、いきなり銅像が動いたりしてな。ハハ……。
「ふむ。特技がないねぇ……」
油断していた俺の耳に届いた誠治の呟き。俺ははっとして、やつの目を真っ直ぐに睨みつけてしまった。
メガネの奥にある誠治の瞳。鋭い眼光を放っているのは分かったが、何を考えているかやはり読み取れない。
しばらく見つめ合う誠治と俺。
……視線を感じて、振り返ると理沙だった。
「……アンタたち、何、男同士で見つめ合ってんの? キモっ!」
理沙の表情は限りなく冷たいもんだった……。うわぁ……。
「まぁ、いい。いずれ、わかることだ」
誠治は呟くと、微笑を浮かべていた。
最初のコメントを投稿しよう!