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昔の事を懐かしんでいたら、思いのほか時間が経っていたらしい。
わずかに聞こえていた少年の声が今はもう聞こえなくなっていた。
「特に変わったこともなさそうだし、次に行こうかな」
一度自分の夢へと戻る。
別に戻らなくても人の夢からまた別の夢に渡れるのだが、そうすると渡りに使った夢を見ている人と関わりが深い人間の夢に繋がるので、ランダムで夢を見たい場合は自分の夢に戻るようにしている。
「さっきは右斜め上だったから、今度は…真下!」
しゃがみ込んで足元の雲を握ると先ほどと同じように破いた。
ちなみに、これも本来ならしなくて良いことである。
こんな風にわざわざ入り口を作らなくたって、夢に入ることは出来る。
何故面倒な手順を踏むのか…、それは過去に出会ったトラウマ級の夢のせいである。
この能力が目覚めてからというもの、
自分の能力は何が出来て、
何が出来ないのか、
様々な試みをしてきた。
成功するときがあれば、当然失敗もある。
――偶然飛んだ夢の中
一面ピカソな景色のど真ん中で
奇声を上げながら
真っ赤に熱された鉄を自分に押し付けて
よだれ撒き散らしながら喜んでいるおじさんを見てしまった日には――…ね。
…私の言いたいことは分かっていただけただろうか。
そういうとち狂った夢との境目は黄色であることが多い。
隣の夢との境を破る手法を編み出し、身を持って検証した結果である。
最初の1年こそ苦労したが、それからは快適な夢ライフを満喫している。
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