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PM十一時、木ノ内春樹は誰もいない学校の屋上に呼び出されていた。
「誰だよ、こんな時間に呼び出したのは」
文句を吐きながら夜風で冷えた手を揉んで温める。
意識しなくても赤いコーンが目に入ってしまう。正直言えば、早くここから立ち去りたかった。
春樹は夜九時に知らないアドレスからメールが届いた。そのメールには十一時に学校の屋上に来るようにと書かれていた。
「たく、呼び出しておいて来ねぇのかよ。やっぱりいたずらか?」
携帯電話で時間を確認して、受信したメールを改めて見返した。
「う、寒っ」
冷たい風が屋上に吹き付けた。しかし、その風が次第に変わってきた。
春樹もその異変に気づいた。急に背中に寒気を感じて振り返る。それは冷たい風によるものではなかった。
「どうして、あなたは悪夢を見ないのかしら」
女性の声が聞こえた。しかし、その姿はどこにも見えない。慌てて辺りを見回す。
「誰だ、どこにいるんだよ?」
急に怖くなってきた。屋上の扉のドアノブを捻るが、ビクともしない。焦りだけが募る。気持ちの悪い風がさらに強く吹き付ける。とにかく早くここから逃げ出したい。この外という密室から。
「どうして、あなたじゃなくて私が悪夢を見ないといけないのかしら。私の悪夢はあなたたちを全員殺したら無くなるのかしら」
誰かが俺の上着のフードを掴んで後ろに投げ捨てた。一瞬、喉がしまり咳き込んだ。
視界の端で白衣がなびいていた。逃げるようにその方向を見て後ずさる。
しかし、その方向には何もいなかった。
「あなたたちが涼君を殺した…。私は全部知っているのよ。それでも私は涼君の力になることができなかった」
また、背後から声が聞こえた。また視界の端で白衣がなびいている。今度はその場で振り返る。白衣を着た長い髪の女が見下ろしていた。
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