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「あ、あんたは…」
長い髪を風にあおられ、顔にかかるのを右手で押さえている。髪の間から見える瞳は俺を鋭く見つめていた。
「あなたたちが涼君を殺したのよね。無理矢理バンジージャンプをさせて。切れやすいロープを使って」
心当たりはあった。涼という名前もすでに忘れていたが、強制的に思い出された。
「ち、違う。あれは俺のせいじゃない。計画をしたのは俺だが、あのロープを用意したのは俺じゃない。あいつだ。信二だよ。信二があのロープを切れやすくしたんだ。俺はただ、単純にバンジージャンプで度胸だめしをしたかっただけだ。」
言い訳をするしかなかった。必死に自分が悪くないということを証明しないと、殺されてしまう。この女からは明確な殺意が感じる。
「ええ、分かっているわ。全員を消さないと私の悪夢は無くならないのよね」
その言葉は俺に向けられたものではなかった。女の後ろには何もいない。誰もいない。いや、誰も見えない。女はその方向に向かって話しかけている。
イカれている、この女。本気で俺を殺そうとしている。ここから逃げることもできない今、助かるにはこの女を殺すしかない。相手は女だ。こんなところで死ぬわけにはいかない。
『君は俺のことを忘れたの?』
耳元で男の声が囁いた。
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