かわいい悪魔の訪問者

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朝の清らかな風を浴びながら、弓を引く。神埼ゆみやはそれを日課にしている。学校に少しだけ早く登校して、弓道場で朝練している。朝日に矢道が照らされ、光を浴びて矢が飛んでいく。 ゆみやは決して弓道部というわけではない。弓道部に許可を得て朝だけ弓を引かせてもらっている。ゆみやは弓道の師範の父を持ち、ゆみや自身も弓の腕は本物で何度も弓道部の顧問からスカウトを受けているがその度に断っている。その理由はある男にしか言っていない。 「また、勝手に練習してるのか?」 最後の一本を引き終えたときに誰かの声が道場に飛び込んできた。 「勝手にって、ちゃんと許可を得ているよ。お前にな。てか、そんなこと幽霊部員のあんたには言われたくないね。あんたよりも練習しているよ」 その男の名前は菅原智則。弓道部に所属はしているが、なぜか練習には参加をしない、変わった男だ。 「うるせぇ、俺はこれでいいんだよ。俺より中る奴なんていねぇんだから」 智則にはその強い自信があった。 「それがよく分からないんだよ」 ゆみやは小さい雑巾をもって外に出た。矢取りに行ったゆみやを智則が後を追う。 「ようするに、俺は天才だってことだよ」 俺の後ろで胸を張っているが、全く興味がないため適当にあしらい、的に刺さった矢を抜いていく。
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