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「それより、お前知ってるか? 先週の金曜日の放課後にこの学校の屋上から飛び降りた生徒がいるって話」
それが本題のようだ。
「ああ、土曜日にニュースでやってたの見たよ。部活で来た生徒に発見されたって。たしか、大友亮介っていったっけ」
小さな雑巾で矢を拭きながら道場に帰る。その後ろを智則がついてくる。
「そうそう。お前、それについてどう思う?」
拭いた矢を矢筒にいれる。
「どうって、何が?」
「なんだよ、お前ちゃんと最後までニュース見てないな。その自殺した生徒が屋上に遺書を残したんだよ。その内容が興味深くてね」
わざともったいぶっている。俺の興味をそそらせるためなのか。その作戦にまんまと引っかかって興味を持っている自分に腹をたてる。俺のその様子に智則は気づいている。だからこそ、さらに腹がたつ。
「もったいぶらずに早く話せよ」
その言葉を待ってましたとばかりに智則は話し始める。
「その遺書の内容は、『今まで申し訳なかった。俺はこの悪夢から逃れたい。だから、あいつと同じ景色を見て俺は飛び降りる』だったらしいよ。気になる点がたくさんあってね。この悪夢ってのもだし、遺書に出てくるあいつってのも誰なのか気になる」
智則は探偵のように顎に手を当てて推理を始める。
「智則、あんまりそういうのに首突っ込まない方がいいぞ。ろくなことがない」
学生鞄を肩から提げ、道場を出る。
「そんなこと言ってお前、かなり興味もっただろ?」
ニヤリと笑う智則の顔を見て一瞬足を止め、智則を置いて教室に行く。
「おい、置いていくなよ」
悪夢か…。大友亮介も俺と同じなのだろうか。
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