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「たしか、あなた神埼ゆみや君だったわよね」
その声の主は椎名恵美。この学校の保健室の先生だ。膝まで隠す長い白衣を着たその女性は屋上の入り口に立っていた。
「こんな所に一人でいたら危ないわよ」
椎名は風で乱された長い髪を後ろにかき上げた。
「すいません。今出ていきます」
目をあわせずに椎名の横を通ろうとした。
「ここから飛び降りたのが一人だけじゃないのを知っているかしら」
俺は足を止めた。いや、正しくは止められた。
「いえ、知らないです」
あくまで興味をもっていない素振りをする。
「去年もここから飛び降りた生徒がいるの。ちょうど亮介くんが飛び降りた場所と同じ所から」
椎名はあくまで独り言のように続けた。
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