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「亮介君はよく保健室に相談に来てたのよ。よく悪夢を見るって、どうしたら夢を見ないのかって。毎日のように同じ夢に悩まされていたらしいの」
亮介の残した遺書に書いてあった悪夢のことだろうか。
「そうだったんですか」
興味を持ち始めたことを隠すために、素っ気なく相槌をうつ。
「もしかしてあなたもじゃないかしらと思って」
思ってもいない質問だった。この女、どこまで知っているんだ。
「去年、ここから飛び降りた生徒の名前は望月涼君。涼君はいじめられていた。そして、そこからバンジージャンプを強要され、飛び降りたときにロープが切れて地面に叩きつけられた。亮介君はそのときのいじめていたメンバーの一人だったはずよ」
なんでそれを俺に言うんだ。俺には何の関係もないはずだ。
「もう一度聞くわ、あなたも悪夢を抱えてないかしら」
これ以上踏み込ませてはいけない、そう察した。
「いいえ、何の事かも分からないです。一年前の事件についても俺は何も知りませんので。そろそろ帰らないといけないので、失礼します」
うまく誤魔化すことは考えていなかった。とにかくこの場をいち早く立ち去りたい。そういう気持ちだった。
「何か相談があったらいつでも来てちょうだい。私はあなたの味方だから」
すれ違う瞬間、小さな声で言われた。一瞬足を止めたが、振り返らずに屋上を後にした。
屋上に一人になった椎名は、コーンに囲まれた所に近づき、柵を掴む。
「どうすれば、私の悪夢はなくなるの? ねぇ、涼君、教えてよ…」
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