5人が本棚に入れています
本棚に追加
屋上でのおかしな一件を終え、学生鞄を肩に担ぎ、イライラを歩き方に表しながら学校を出ようとしていた。
「おーい、遅かったじゃんか。どこで何してたんだよ」
さらにイライラを増す声。校門を出たところに智則が立っていた。
「なんであんたがここにいるんだよ」
「待っててやったんだよ。ありがたく思え。どうせ一緒に帰る奴なんていないんだろ?」
「お前に言われたくねぇし、大きなお世話だ。お前は練習にでも行け」
軽くあしらって帰ろうとしたが、後を着いてきた。
「残念ながら、今日は月曜日だから練習は休みだよ」
小馬鹿にしたような言い方。こいつに友達ができない理由がよく分かるよ。
俺のあのことを言ったのもこいつだけだ。あんまり物事を深く考えないこいつにだけはあれを言うことができた。
「なぁ、お前って悪夢って見るか?」
「なんだ、なんだ、どうした。相談か? 相談ならなんでも聞くぞ」
子供のようにはしゃぐ智則を見て、イライラが増した。
「いいから、質問に答えろ」
「おー、怖い。うーん、怖い夢は見るけど、それを悪夢と呼んでいいかは分かんないな。化け物に追いかけられる夢とかならいっぱい見るけど、お前がいう悪夢とは違うんだろ?」
化け物に追いかけられる夢もよっぽどだと思うが、智則の言う通り今は違う。
「いいよな、忘れたくない過去がないやつは…」
「ちょっと待て、それは心外だぞ。俺にだって思い出したくない過去はある。ただ、それをどう頭のなかで意識しないかだ。忘れることができないならそのことを意識して消す。それだけだ」
こいつのこういう考え方は俺とは違う。
「そういうところが、俺とお前の違うところなんだろうな」
「誉め言葉として取っておくよ。そんじゃ、俺の家こっちだから、元気出せよー」
智則は手を振って消えていった。
あれぐらいいい意味で能天気な方が損なく生活ができるんだろうな。悪夢なんて見ないで。
最初のコメントを投稿しよう!