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――――――――――…
「くそ眠ぃ…」
昨日、新羅の意味不明な言葉のせいで全く眠れなかった…
しかも、あのノミ虫野郎の事が頭から離れねぇ…
「…ん?…ノミ虫の匂い…近くに居やがるな…」
見回せば案の定横断歩道をこちらに渡ってくる臨也。
近くにあった標識を引っこ抜けば、臨也がこちらに気付く。
周りの人間が早々と散っていく。
「あーあ…せっかく今日は仕事が上手く行って気分良かったのに…何で現れちゃうのかな?ねぇシズちゃん。」
「………。」
いつも通り止まらない口で早口にまくし立てるノミ虫を昨日の新羅の言葉を抹殺しながら睨みつける。
「俺、疲れてるんだよね…シズちゃんみたく化け物みたいな身体してないから…」
「………。」
確かにテメェは細くて…女みてぇ…いやいや何考えてんだ…
「あれぇ?無視しないでよ…シズちゃん。」
「…………。」
ありえねぇ…俺がコイツに恋なんざ…
「ねぇ、シズちゃん。」
「うるせえぇぇ!!」
持っていた標識を振り上げる…まだ投げていないのに物が壊れるような大きな音が鳴った。
何かと思えば対向車線に居たトラックが暴走したようにこちらに向かって走ってくる。
そこには爆音に気づき驚いたまま固まっている臨也。
「…っ…!」
「………。」
ほぼ無意識だった…と思う。
構えた標識を少しズラしトラックに向けて投げ、そのまま道路に飛び込みやっぱり細いアイツを抱えて人が居なくなった歩道に滑り込んでいた。
「…っ…し、シズちゃん?」
「…ってぇ…」
数ヶ所擦りむいた…地味に痛い。
「なんで俺を助けたの?せっかくのチャンスに…」
「うるせぇ…テメェは俺が…俺の手で殺す…それだけだ。」
無い頭で考えた精一杯の言い訳だ。
本当は身体が勝手に動いてたなんて認めなくもねぇ…
ましてや、コイツを護るためとか…
それはつまり恋とか…
絶対に認めねぇ…。
衝動的。
そう、それはいつも衝動的で…
身体が動いたのも…
アイツに殺意以外の感情が芽生えたのも…。
Fin.
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