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最近アイツを見ると胸が変にざわめく。
『殺意』とは別の感情。
「うわ…シズちゃん…」
「いーざーやくーん…此処には来んなって何回も言ったよなぁ?」
憎たらしい黒いファーコートを見つけて近くにあった標識を一本引き抜く。
「あーあ…公共物破壊も程々にしたら?シズちゃん。」
「うるせぇ…」
「あと…無理も承知で一応言ってみるけど……見逃して?」
「死ねぇぇぇ!!」
反吐が出るような笑顔の野郎に構わず標識を投げ飛ばす。
「うわ……っと…本当シズちゃんは…会話のキャッチボールって知ってる?」
「うるせぇ…テメェと話すことなんざ何もねぇよ。」
「まぁ…それもそうだね…」
そう言って笑ったまま投げつけて来たナイフを間一髪で避けると…いつの間にかノミ虫野郎が目の前まで詰め寄っていた。
「………!?」
「ハハ…シズちゃんって本当単細胞だね…こんな簡単に敵を近付けちゃってさ。」
身体が触れ合うくらい近づいて来たアイツが真下から見上げてくる。
男にしては綺麗な顔の赤い瞳に吸い込まれそうになる。
柔らかそうな髪から、ふわりとシャンプーの良い香りがした。
「…。(何考えてんだ俺は…)」
「シズちゃん固まっちゃった?…ならちょうど良いや…俺、急いでるから…」
そっと身体が離れて我に返った頃にはアイツは逃げる体制に入っていた。
「てめっ…待ちやがれ!!」
「シズちゃん、ばいば~い!!」
「くそっ…次は絶対ぶっ殺す!!」
さらに大きくなる怒り…それとは別に体温が上昇してる気がする。
ノミ虫が近づいて来たときから胸がざわついて収まらねぇ…
「あれ?静雄?」
…畜生……イライラする。
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