運命のディストーション

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 黒煙が舞う。  気がつけば森の奥深くまでやってきてしまった。後ろから迫りくる木偶の坊に対して、どうやって対応しようかと考える。 ーーーーーーーーーアウォォォォォォォォォォ。  木々をなぎ倒しながら攻入る姿はまるで戦車のようだった。時は闇を濃くする。  自身の熱量と旋律を胸に森の中を掛ける、長い黒髪は二つに束ねられ、さながら黒蝶の様に夜の闇を翔る。 「ッチ!」  鬱蒼と生い茂った森の木々を飛び移りながら、開けた場所を探していた。音が近くなる、横見で後方を確認する。  巨大な瞳が機械的に此方を捉えながら、自らの四肢に掠り傷一つ伴うことなく猛進を続ける。 「ーーーーーーーエネミーとの距離二百維持」  近付き過ぎず離れ過ぎないように木偶の坊を引き付けるには、正直飽き飽きしていた。白桃色の眼はやがて開けた場所を捉えた。  と言うよりも正確にはグルリと森を一周したことにより、木偶の坊が押し倒した跡地に戻っただけだった。
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