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急いで靴を履いて追いかけるが、既に姿は見えない。
「……理紫の、ばか」
風が身を切る様に冷たい。
こんな寒い中帰ってしまうなんて…。
身を震わせながら、理紫を想う。
海月は思い出した様にポケットから丸い金具を取り出した。
月に翳して、そっといつもの定位置に嵌めると、
「《本物》になりたい…な」と呟く。
自分が《本物》だったなら、きっと今日だって話してくれた筈…。
理紫の《本物》になりたい。
大事だからこそ言えない事があるなど思い付きもせずに、海月は心から本当にそう願って、銀色に光るキーリングに頬を寄せる…。
その時、ポケットで海月の携帯が鳴った。
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