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『…お休み』
そう言って、急ぐようにプツッ…と切れた電話。
「……っ」
海月は携帯を抱き締めて、その場でズルズルとしゃがみ込むと、両手で顔を覆って声も立てずに涙を零した。
泣いちゃダメ、まだ…、泣いちゃダメ。
ポタポタと落ちる涙が床に染みを作る。
その時、海月は砂月に読んでやった童話を思い出した。
想いが叶わなくて、王子様の為に海の泡と消えた《人魚姫》。
苦しくて、苦しくて、こんなにも欲深くなってしまった自分が許せない。
理紫を失うのがこんなに辛いなら、海月はこのまま人魚姫の様に泡になって消えてしまいたいと、そう思った…。
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