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「そんな事ないよ…」
理紫の香りに包まれていると、とても安心する。
胸がいっぱいになる…。
理紫は片手を後ろにやり、そっとドアを閉めながら、愛し気に旋毛に口付けた。
海月が抱き付く力を強めると、頭上でクスッと笑う声が聞こえる。
「どうしたの?そんなに俺に会いたかった?」
理紫にふざけた口調で言われたけれど、
「うん、すごく会いたかった」
海月の口からは、素直な真剣な言葉が零れるように出てきた。
「海月…?」
理紫はそんな海月に違和感を感じたのか、顎に手をかけて上を向かせて聞いてくる。
「何かあった?」
キラキラと甘く至近距離で微笑まれ、見つめられると、海月は心を見透かされそうな気がして視線を逸らした。
「な…にもないよ?」
「…本当に?」
心臓が色々な意味でトクトクと騒ぎだす。
「本当に、なにも…」
続けようとした『ない』という言葉は、そのまま重ねられた理紫の口唇で吐息と一緒に飲み込まれた…。
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