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そんな時、ある事に気付いた。 帰りに《彼女》と帰る時、理紫は必ず桜の樹の下で待ち合わせをする事に! サッカー部に所属する理紫は仲間と帰る事もあったが、彼女に一緒に帰れない事を伝える時も、あの桜の樹の下で待ち合わせをして伝えている様だった。 それからの3年間、海月は放課後になると、校舎の3階にある桜の樹が見える図書室に向かい、窓際の席に座って何時にくるか分からない理紫を待って過ごす様になった。 彼女と一緒のところを見ると毎回切なくなったけれど、それよりも理紫の姿を見られない方が嫌だったから。 中学から仲の良い菜花〈ナノカ〉や真理〈マリ〉は、いきなり図書室ばかりに行く様になった海月を不思議がった。 けれども冷暖房完備の図書室の居心地の良さに納得し、一緒に勉強をしたり、部活のある真理の帰りを菜花とお喋りしながら待ったりしたりした。 夏が来て、秋が来て、冬が来る。 そして、また春。
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