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海月に似た柔らかい面立ちで、けれど海月には無い手ごわさを持つこの母親は、
『娘の事を、ずっと大切に思っていてくれてありがとう』
微笑みながら、理紫にだけに聞こえるようにそう言うと、玄関に降りて扉を開けた。
何故そこまで分かったのか。
けれど思い当たる節は無くはない…。
吉村家に接触している事を出来るだけ海月に知られない為に、陽子には、冗談めかして海月にフられた話をしていたし、それから、もう1つ…。
ーーーそっちだろうな。
それを見ていたから、ずっと黙っていてくれたし、気付いたのかも知れない。
トン、トン、トン…。
階段を降りてくる小さな足音が聞こえてくる。
「さっちゃん!」
海月が砂月の傍へと駆け寄った。
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