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「ねぇね…、かえっちゃうの?」
お気に入りの大事なうさぎのぬいぐるみを抱き締めて、赤い目をこすりながら砂月が言った。
「うん…、明日学校があるからごめんね」
優しく頭を撫でてやると、砂月が海月の後ろにいる理紫に目をやる。
「さっちゃん…」
「…サトくん、ねぇねなんだよね」
瞳を潤ませて、確かめるように聞かれた理紫が、
「…さっちゃん、嫌だったらいいよ」
と、薄く微笑むと、砂月はギュッ…とうさぎを抱き締める手を強くした。
あの中に、自分が預けた物を宝物にして、大事に入れているのを知っている。
理紫には、幼いながらも自分の事をひたむきに想ってくれている砂月の気持ちを、多少なりとも利用した自覚はあった。
けれども、こんなに懐いてくれれば、可愛く思わない訳がない…。
「アレは半分、さっちゃんにあげた物だから…」
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