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海月がもっとよく見ようと上に翳そうとすると、
「海月さん、もうそろそろお暇(いとま)させてもらおうか?」
いつの間にか傍に来ていた理紫が、有無を言わさない笑顔で指輪を持っている腕を掴む。
「え…っ?」
「…帰るよ」
理紫は海月にだけ聞こえる声でそう言うと、その腕を引いたまま、
「今日はありがとうございました」
と、陽子に頭を下げて玄関口へ降りた。
「また来てね。今までのように1人でも全然構わないんだから」
ニッコリと笑う陽子に抱かれている砂月は、陽子の肩口に顔を埋めてこちらを見ようとしない。
理紫はため息を吐くように苦笑すると、そっと砂月の髪に触れた。
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