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「…分かった」
理紫の返事を聞くと、今度は海月が理紫の手を引いて、木の影にあるベンチへ向かう。
今の時期の夕暮れは釣瓶落としだ。
後、30分もすれば、とっぷりと陽もくれてしまうだろう。
「ちょっと待っててね」
海月は理紫をベンチに座らせると、自販機へと走る。
少し悩んで、やっぱり理紫には微糖の缶コーヒーを、自分にはミルクティーを買った。
熱い缶を手に持ち、チラリと見やると、理紫は考え込むように自分の膝に肘を付き、その手に顎を乗せて遠くを見ている。
海月は、ふと思い立ち、ソロリソロリと理紫の背後から忍び寄った…。
考え事をしている理紫は気付いてはいない。
海月は笑いを堪えながら、後ろから熱い缶を理紫の頬にぴとっ…とくっつけた。
「うわっ…ちっ!!」
何事か!?と、飛び上がらんばかりの思った以上の反応に、海月は声を出して笑う。
「理紫ったら…、今の声!」
「何んだよ、もう…」
クスクスと笑い続ける海月に、理紫は呆れたように睨んだ。
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