14876人が本棚に入れています
本棚に追加
「油断してるからです」
海月は理紫の前に回ると、その隣に腰掛ける。
「…へぇ、そうなんだ」
「そうですよ」
そして、「どうぞ」と缶コーヒーを差し出すと、理紫がニヤッ…と笑う。
「な、に?」
不敵な笑みに海月が怯めば、
「別に…。ありがとう」
と、受け取るフリをして両手で海月の手をフワリと包んだ。
「理紫…?」
海月の心臓がトクン…と音を立てる。
思わず、理紫の瞳を見つめてしまった、次の瞬間!
「きゃあっ!」
理紫が包んだ手にギュッと力を入れて、熱い缶ごと海月の手を縦にガシガシと振った。
あまりの熱さに、海月は理紫の手を振り解く。
缶コーヒーが地面に落ちた。
「…ひどいっ!」
「油断してるからです」
今度は海月が同じ言葉を言われ、ため息を吐く。
……やっぱり、勝てない。
最初のコメントを投稿しよう!