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「…言わねーよ」
つまらなさそうに桐谷が口を開いた。
「みぃちゃんが知ったら、余計に責任感じて、お前から逃げられなくなるって寸法だろ。お前の手の内でなんか動きたくないね。…俺は、図らずしもお前の手助けをしちまったみたいだからな」
理紫は何も言わない。
ただ、何かを含んだ微笑いを口唇の端に浮かべ、口元に手を当てて桐谷の話を聞いている。
そんな理紫を見て、桐谷がわざとらしく身震いをした。
「俺はお前が何だか薄ら寒いよ。お前の本性知ったら、みぃちゃんの目も覚めるんじゃねぇの?」
「…海月はもう、俺から逃げませんよ」
海月も、理紫のそういう仄暗い部分を、まるっきり知らなくはない筈。
この先、無理が生じないように、理紫にしても少しずつ見せてきたつもりだ。
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