始まりの唄が、聴こえる。

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昔は今の様に真っ黒の髪をしていなかったし、肌も透けるほど白くはなかったし、口数もそれなりに多くてよく笑う女の子だった様に思う。 何より今のさやの印象を決定付ける真っ黒でどろどろと色々な感情を煮詰めて覆い隠した様な瞳は、以前のさやとはかけ離れているものだった。 昔のさやは、元々色素が濃い方ではなかったのと、よく外を出歩いていた為に、うっすらと栗色の髪をしていて、日焼けを気にせずにどこへでも出かけていたためかうっすらと日焼けしていた。 それでも同年代の女子に比べればそれほど日焼けしている方ではなかったかもしれない。 しかし、今のさやと比べれば明らかに健康そうな肌色をしていたように思う。 打てば響くタイプで、話しかければその表情がくるくると変わっていく様子を楽しめたし、時には冗談も言っていた。 そして、きらきらと日の光を受けて輝くその瞳は澄んでいて、どこまでも透明な水の底を覗いているかの様だった。
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