始まりの唄が、聴こえる。

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さらさらと。 やわらかく乾いたカーテンみたいな風が、僕の頬を撫でていた。 何故僕がこんな印象をこの風に抱いたのかというと、安直ながらも目の前で真っ白で太陽の光を容易に通してしまうくらい薄くて柔らかいカーテンがゆれていたからだ。 ゆらゆら。ゆらゆら。 カーテンの揺らめきにあわせて、僕の頬に、真っ白なこの部屋に、そして質素なベッドに横たわる母に、カーテンの陰が落ちる。 ゆらゆら。ゆらゆら。 母は、目覚めない。 ゆらゆら。ゆらゆら。
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