偶然と必然

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「なんかいいことないかなぁ」 かなり冷え込む11月の夜。 友達と2人で お気に入りのバンドのDVDを見ながら 毛布にくるまり、 アイスを片手に、 私は言葉を漏らした。 「なんかって?例えば?」 「例えば・・・ ネイキッドの陽(よう)ちゃんと出会えるとか!」 ネイキッドとは、 今見ているDVDに映っている5人組のバンドの名前で、 陽ちゃんとはそのバンドのボーカルのことだ。 隣にいるミツルと私は デビューより少し前に 彼等のライブを見てから夢中だった。 「エミ・・・。 あんたは純君っていう素敵な人がいるでしょ? 罰当たるよ!」 「そうだけどぉぉ。陽ちゃんかっこいいんだもん」 ミツルの言うとおり、 私にはもったいないほどの 本当に素敵な彼がいる。 そして、この時の私は幸せだった。 ただ… 幸せになれて、 何か物足りなさを感じていた。 ミツルが突然 ガサゴソとカバンから何かを 取り出そうとしているのにきがつき、 何か良いものがでてくるのではないかと覗き込むと、 彼女が取り出したのは、一冊の雑誌だった。 ニタニタと笑いながら得意げに見せてきたのは わざわざ付箋までつけていた、 雑誌の1ページ。 「このクラブ。行ったことある?」 「ないけど?クラブなんていきたいの?」 「よく来るらしいよ?ネイキッドのメンバー」 情報の出どころは、 私の彼氏の友達が経営する ライブハウスのバイトの子。 その子がこのクラブで、 VIPルームらしき扉から、 ネイキッドのメンバーが出てくるのを 見かけたらしい。 考える間もなく、すぐに答えはでてきた。 2人で顔を見合わせて。 にたりと笑い、 互いに指をさし 同時に声を発した。 「行っちゃおうかぁ!?」 時計は21時 すぐさま念入りに支度をして家を出た。
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